焼き畑

気がついたら焼け野原

SS習作:お題『はちみつ』

習作載せたり、書きかけのSSぶん投げたり出来る場所を確保できないものか、と思ったので、ブログを開設してテスト投稿。
昔、練習として書いた東方SSを適当に見繕って貼り付けてみる。
お題『はちみつ』で書いたやつ。

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 とろーり。
 透き通ったオレンジ色の液体が、傾けられた瓶の口からこぼれ出し、滴り落ちる。糸を引きながら、流れていく。
 きつね色のパンケーキが、粘性の海に沈んでいく。

「ちょっと」

 とろーり。
 こんがり焼けたパンケーキが、綺麗にコーティングされていく。
 照明の光を反射して、つやつやと輝く。

「ねえ、ちょっとレミィ」

 ごぽり。とろとろ。
 私はいよいよ液体の入った瓶を傾ける。すでにそれは逆さまに近い。重力のかかるままに、その中身が勢いよく流れ落ちていく。

「いくらなんでもかけすぎでしょ」

 そこで、パチェからストップがかかる。ここからがいいところなのに。
 私はしぶしぶ瓶を置く。

「レミィがはちみつ好きなのは分かったからさ。見てる私のほうが気持ち悪くなってくるわ」
「何さ。はちみつの何がいけないっていうの」
「はちみつを責めてるわけじゃないわよ。限度があるでしょ、って言ってるの。うぷ」

 手を口に宛がい、うめく魔女。それを尻目に、私はパンケーキにフォークをぐさりと刺し、大きく口を開けてぱくりと頬張る。
 口の中に広がる強烈な甘さ。パンケーキの自然な甘さを殺し切った、殺人的な甘さ。
 私は思わず笑顔になる。甘い。美味い。

「……甘党ってレベルじゃないわ」

 パチェはそう言うと、自分のパンケーキを、ナイフとフォークで上品に切り分けて、口へ運ぶ。トッピングはバターのみ。味気なさそう。
 この美味しさが分からないなんて、つまらない人生だこと。
 私は些細な優越感を憶えながら、大口を開けてパンケーキを放り込む。突き抜けるようなはちみつの甘さ。芳醇な香り。最高だ。
 改めて私はパンケーキにフォークを突き刺す。あと一枚。もう少し味わって食べるべきだったか、と少し後悔しながらも、私はパンケーキをはちみつに絡ませる。はちみつを存分に浴びて、きらきらと金色に光っている。

 金色。――まるであの娘のような。

「全く。甘党仲間が欲しいなら、妹様にでも頼めばいいじゃない」

 どきり、とした。心を読まれでもしたのではないか、というくらいの、ドンピシャのタイミングの発言。
 思わず、フォークを取り落としそうになり、あわてて握り直す。
 私はそっと目を閉じる。まぶたの裏には、はちみつを溶かしたような綺麗な金色の髪。私以上の甘党のあの娘。最愛の妹。最愛だったはずの妹。

「いい加減、出してやらないの。もう十分でしょう。だいぶ力の方も安定してきたし、それに――」
「アイツは関係ないだろッ!」

 思わず声を荒げる。体が震える。怒り、悲しみか。罪悪感か。私の体は、面白いように震えた。
 私はあの娘を閉じ込めた。何百年も前のことだ。彼女は私を恨んでいる。今さら元のようには戻れない。
 パチェは横目でじっと私を値踏みするように眺めていたが、やがて興味を失くしたようにフォークを動かし始めた。味気ないバター味のパンケーキが、口元に運ばれていく。
 私はしばらくうつむいていたが、意を決してフォークを勢いよく握りしめ、えいやっと残りのパンケーキを丸ごと頬張った。

 ひたすらに甘いはずの、彼女の色をコーティングしたパンケーキは、何故か少しだけ、バターのような塩辛さがあった。


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 これが何も加工しない、プレーンなフォーマット。
 悪くない、が少しだけ文章の高さが少なくて詰まって見えるか? CSSが使えそうならば、あとでそれっぽく書式を考えよう。
 作品のコメントとしては……うん、SSじゃなくてただのワンシーンだよね、これ。