焼き畑

気がついたら焼け野原

映画感想:『ハウ』を見たよ

 映画を見る。『ジュラシック・ワールド』以来。

 洋画が見たかったのだが、いいタイミングに目ぼしい映画を上映してなかったので、適当に邦画からチョイス。特に何も考えず、『ハウ』というこてこての動物ものっぽいイメージ映像の作品を見ることにした。

 せっかくなので前回同様、見た感想をまとめておこうと思う。
 前回の『ジュラシック・ワールド』のときと同様、「今日のやつ」内の一トピックとして書いてしまおうと思ったが、前回は思いの外文章量が嵩んでしまったので、その反省を踏まえ、今回はあらかじめ単独の記事にまとめておくことにする。後から振り返るときも、こちらの形式の方がきっと便利だろう。

 以下、前回同様ネタバレを考慮せずに書きたいことを書くので、ネタバレを気にする方は読まないこと。

 ★★★以下、映画のネタバレあります★★★

 

 うーん!
 キラリと光るものは感じないでもないが、全体としてもうちょっとなんとかならなかったのか、と思ってしまうような腹落ちし難い感覚が全体を通してあり、良作と言い難い作品になってしまっていると感じた。

 あえて数値に表すなら、5段階評価で1.5くらい。

 以下、具体的に気になったところを。

 まず、主演の犬・ハウが可愛い。めちゃくちゃ可愛い。真っ白でふわふわの大型犬ですよ、しかもめちゃくちゃ頭良くて従順で人懐っこいんですよ、可愛いに決まってるじゃないですかそんなの。そんな犬がね、ほぼずっと出ずっぱりで色んな人に可愛がられ、幸せを与えていく、そんなの、犬好きとしてはそれだけで花丸あげる以外にないじゃないですか。その点だけで、犬好きは見る価値がある、と断言できる。
 というか、監督がよっぽど下手だったり変にこだわりを持っていたりしない限り、題材的に素材的に失敗しようがない。動物を魅力的に撮る、という点に関しては少なくとも上手な監督だった。

 ちなみに、ハウを演じたのは、ベックという犬らしい。
 映画見てて、めちゃくちゃ頭いいなこの子、演じてる子も頭いいんだろうなあ、と感心していたので気になっていたらスタッフロールにちゃんと役者として載っていた。
 ハウは、とある理由で声帯を切るという手術を受けており、そのため「ハウッ」という掠れた吠え声しか出せないのだが、そのあらすじを事前に見たときは、それを映画でどうやって表現するんだろう? ベックがそういう演技ができる犬なのかな? と思っていたのだが、スタッフロールを見ると女優さん(声優さん?)がクレジットされていた。人の声だとは全然気づかなかった。違和感なくあの声を出せるのはすごい。

 ストーリーについては、先を読ませない展開で見応えが結構あった。
 動物ものということで、「人間と犬が出会って、絆を育んで、途中で怪我か病気でもして、最後は涙涙の死別、みたいな御涙頂戴の陳腐なストーリーかな」と予想していたのだが、いい意味で裏切られた。
 確かにハウと飼い主・赤西民夫が出会って、絆を育んでいくという要素も含まれる。しかしそれは前提的な部分であってメインストーリーではない。民夫とハウのふれあいの描写は、ダイジェストですごい勢いで流されてしまう。そして民夫にとってハウのいる日常が当たり前になったある日、原っぱにハウを連れて行く。木陰で民夫がうとうとしていると、小学生たちがバットで打ち上げた大飛球を追ってハウが原っぱを飛び出していってしまう。やがて民夫が起きると傍らにいたはずのハウがおらず、そのまま行方不明になってしまう。
 え、テンポ良すぎない? 体感で開始15分しか経ってないけど、この急展開は起承転結の転の部分じゃないの? ここからどうするの? と面食らった。  実際は、ここまでがプロローグみたいなもので、メインストーリーであるハウの長い長い冒険はここから始まるのだが。

 そして、ラスト。色々広げた風呂敷とハウの冒険劇と、民夫の気持ちと、それぞれにどういうオチをつけるのかと思っていたのだが、なるほどそう来たか、と妙に感心してしまった。
 正直最初は、ハウが青森から横浜へ(横浜で合ってたよね?)ひた走る→民夫は民夫で懸命にハウを探す→ついに再開し感動のBGMを流してフィナーレ、になるかなーと予想していた。そうでないと、あんなにハウが苦労して走り抜けた青森から横浜への道のりが無駄になると思ったからだ。そして同時に、それだと陳腐だなあとも感じていた。
 なので、民夫が、ハウを探すのではなくハウは死んだものとして、その悲しみに対してちょっとずつ整理をつけようとしつつあるのを見たとき、「おっ?」と思った。「これ、もしかして再会しないつもりか?」と。どうするんだろう、と見守りながら見ていると、民夫は、飼い猫を亡くした同僚の女性・足立桃子と居酒屋で飲みながら、せつせつと語り始める。

「悲しみは忘れることはできないと思います。ただ、戸棚の扉にそっと閉まっておくしかないんです」(記憶ベースなのでだいぶ違うと思います。あと、実際の演技はもっとたどたどしい)

 このシーンで、ああ、民夫はもう諦められたんだな、と理解してしまった。
 諦める、と書いてしまうと後ろ向きに聞こえるかもしれないが、実際は穏やかで前向きで、民夫の確かな成長を感じさせるセリフだった。決して悲壮感はない。
 ラストよりも何よりもこのシーンに私は一番心を動かされた。深いセリフだ、と思う。悲しみは時が癒す、だとか、止まない雨はない、だとか言うような、割り切ったセリフよりもよっぽど、真に迫っているように感じた。

 だが、民夫の予感とは裏腹に、最後、民夫はハウと再会する。しかしそのとき既にハウは他の人の飼い犬・ブンとしての生活をスタートさせていた。リードに繋がれ、小学生に連れられたハウの姿を見て、彼はハウが既に自分の手を離れたところで生きていることを悟る。小学生に対して、「それは僕の飼い犬だ」と言うでもなく、リードの持ち手を小学生に渡し、「リードを放しちゃダメだよ」と優しく忠告だけして、去る。その後、小学生の家族の一員となったハウが、かつて民夫とそうしたように、ボール遊びに興じるところでエンディング。

 民夫が、振られた婚約者の心の穴を埋めるためにハウを飼い始めたのと、居なくなった小学生の父親の心の穴をハウが埋めているという対比、さらにいえば、リードを迂闊に放して眠りこけてしまったことでハウとの今生の別れの道を進まざるを得なくなった自分の教訓を踏まえたセリフ、「リードを放しちゃダメだよ」、などの演出が心憎い。

 正直、このオチは予想できなかったので、驚いた。面白い着地点だな、と感心した。

 ……とまあ、こんな感じで褒めるべき点は多く、全体として、ああ上手いなと思わせるシーンや演出も多々あり、それだけの映画だったとしたらかなり推していただろうと思う。5段階評価なら、4~4.5くらいはつけていたんじゃないかな。
 が、実際はそうはならなかった。
 その理由は、以下に書いたような多数のツッコミどころや納得いかないやり取り、キャラクター描写が要所要所で挟まれ、全体としての印象を引き下げているように感じたからだ。ここのシーンがだめ、とかでなく、全体にダメなシーンが散りばめられているので、話に集中できずすごく気が散る。面白いじゃん、と感じた次の瞬間には、いやいやそれはどうなん? と思ってしまうシーンが挿入される。いいところと悪いところが常にごちゃ混ぜに存在している感じ。

 ツッコミたいところは多々あるが、一番は、キャラクターがどうにも、不器用で、言葉足らずで、考慮不足。それも、特定のキャラが、というわけではなく、全員が全員なにか考慮不足で迂闊な面を持っているのが質が悪い。 「この人がこのシーンでもう少し上手く立ち回れてさえいれば、もっとより良い結末になっただろうに」と思わずにはいられないシーンが多く、やきもきする。キャラクター造形に納得感がないから感情移入できないし、共感も応援もしがたい。
 せめて主人公の民夫がもうちょっとしゃんとしていたら、あるいは逆に民夫以外の登場人物全員が上手く行動できていれば、もっとストレスフリーに物語に入り込めただろうな、と考えるととても残念だ。
 もしテーマが「不器用ながら愚直に誠実に生きていく人たち」みたいなものだったら、それはそれで納得しただろうが。

 と書いたところで、あんまり伝わらないだろうな、と思ったので以下、登場人物の気になった挙動をできるかぎり網羅的に列挙する。
 たぶん、こいつ性格悪いな、と思われるだろうな。気にしない。
 あと名前と顔がうろ覚えなので、それこのキャラのことじゃなくない?みたいの多いかも。

  • 民夫
    • キング・オブ・コミュ障。ほぼ全部のシーンにおいて、無言・曖昧な態度・呆けた相槌を繰り返す、パッとしない青年。
      • あえてそういうキャラづけにしたのだろうというのは理解してるつもりだし、作中は常にショッキングな出来事の連続なので呆然としてしまうのも分かるけど、それにしたって良い大人なんだからもっと言葉によるコミュニケーションを取ろうと努力してほしい、と思ってしまう。
      • 口下手でもいいから、何かしら自分の気持ちをちゃんと言葉にして、リアクションを取ろうよ。エレベータに同乗した女性に無神経な言葉をかけられてキレる気持ちは分かるけど、その怒りの発露が「めちゃくちゃに階数ボタンを押して降りる」というのは余りにも幼稚。もっとその怒りを、巧く発現できないのか。小学生か。
      • 婚約女性にフラれるシーン、ちゃんと相手女性を訴えよう? どう見ても10:0で相手が悪いんだし、ローン組んで家を買わせてからの身勝手な理由からの一方的な婚約破棄とか、指を咥えて見ていることではない。
    • 犬を立ち入り禁止のところでリード・首輪を外して遊ばせるな。工事現場ならどんな危ないものが転がってるかわからねえぞ。そんなところで呑気にボール遊びに興じるな。柵もないところで自由に走り回らせるな。リードを繋がずに寝るな。
      • 犬を飼うのは初めてっぽかったし、寝るときリードを放していた件は、本人も反省していたし仕方ないとしても、それ以外にも全体として行動が迂闊で考慮不足なので、ハウと離れ離れになるトラブルが起きたシーンも、「そりゃそんな杜撰な飼い方してたらいつか起こるよ」としか思えない。百歩引いて、リードを外すのを許容できても首輪を外すのはダメだろ、首輪着けずに放浪している犬なんて今日日速攻で通報からの保健所行きだぞ。首輪つけてれば、ハウに会った誰かが首輪のタグを見てくれるかもしれないし、少なくとも飼い犬であることは察してくれるであろうのに。
    • ラスト、嫌いではない終わり方なんだけど、ハウの気持ちがおざなりなのがなんとも。最後、形だけでもいいから、何らかの形でハウに「自分と向こう(小学生)、どちらに付いていきたい?」と聞ければ良かったのにな。事情を話して相談するか、せめて連絡先聞いて会いに行ってやればいいのに。まあ、事情を伝えてしまうと、その母子の埋まりかけたピース(ブン)を取り去ってしまうことになりかねないから、やめたのかな。でもハウの気持ちがちょっとおざばりなのが(以下ループ)。
  • ハウ
    • 文句なしに可愛い。が、ところどころ不自然に頭が良すぎてご都合主義的。
      • 人間の論理で考えれば自然な行動でも、犬であるハウがそれを理解し行動できるかと言われると、うーんどうかなー、と思ってしまう。
        • 例えば、DV野郎を助けるシーン、ハウにとっては好きな人(飼い主=女性)に悲しい目をさせる悪人でしかないと思うのだが、ハウはどうして助けようと思ったのか? あるいは助けるにしても、何故車から遠ざからないと危ないと判断したのか、どこまで逃げれば安全かを把握したのか。
        • 道中いろんな人に餌をもらい、世話をしてもらいながら、何故定住しようとしないのだろう? 民夫が好きで、民夫のところに帰りたい、と思っているからだ、と言われればそれまでなのだが、人間の社会を理解できない動物であるハウにとって、ここはいるべき場所じゃない、という判定はどういうロジックが働いてそう判断しているのだろう?
        • 方角が分かっているような南下の仕方も違和感。
  • 課長
    • 一番評価のアップダウンが激しい人。良い人かな?と思った瞬間、クソみたいなムーブをかましているし、かと思えば「ああいやな上司なのかな」と思ったら次の瞬間には含蓄のあるセリフを吐き始める。この作品はこの人をどう描きたかったのか?
      • 民夫とハウが出会うきっかけを作った張本人ではあるのだが、その出会うきっかけ自体が結構なクソムーブ。
        • 理由を言わずに(おそらく休日に)部下を自分の家に呼びつけ、説明せずにハウとご対面。人懐っこく頭のいいハウに思わず顔を綻ばせる民夫。それを見た課長夫婦が、「いい人が見つかってよかったー」で押しの弱い民夫が反論できないのをいいことに、なしくずしでハウを押し付ける。
          • いや、軽々しく決められる話じゃないんだわ、一匹の命がかかってる話なんだわ。とてもコミカルで流していいやり取りじゃない。とても犬や猫の里親を探す活動を行なっている人のやり口とは思えない。しかも犬を飼ったことがない初心者に大型犬。案の定トラブル起こしてるし。
  • 課長夫人
    • 課長と共に、ハウを民夫に押し付けた人。夫と同様、犬を飼うという行為に対する認識が軽すぎる。
      • エレベータで民夫に無神経なセリフ吐いたのこの人だっけ? あのセリフは酷い。
        • ペットロスで落ち込んでいる人に対して「気持ち切り替えよう、新しい犬飼ったら?」は常識と照らしてもデリカシーがなさすぎる。……あれ?これ、課長夫人だっけ?別の人かもしれない。
  • 市役所に非正規で働いている女性
    • 市役所に非正規で働けるの? と思ったが、調べたら大丈夫らしい。バイトしてるのも、非正規なら公務員の副業には当たらないのか?
    • かわいいが、なんとなくキャラが掴めなくて苦手な人
  • 野球してた小学生ズ
    • 飼い犬が逃げ出したの見てんだから、騒ぐなり警察呼ぶなり飼い主起こすなりしろや! なに忽然と消えてんの!?
      • 小学生にどこまで常識を求めるか、は色々考えられるだろうが、ベストじゃないにせよ何かしら行動は起こせたと思うし、すべきだったと思う。もしトラックにハウが入っていっちゃうのを見てたとしたら、それを民夫に報告するだけで、展開天と地ほど違うと思うよ?
        • ある意味、このバックレがこの映画一番の悪いムーブだったかも。
        • 民夫も民夫で、一度小学生の顔は見ているのだから、その小学生たちを探して事情を聞くくらいのことはやろうと思わなかったのだろうか?
  • 横浜から青森までハウを連れてった長距離トラック運転手のおっちゃん
    • ハウに気づかず荷台を閉めちゃうのは……まあ状況的に仕方ないのかな?扉閉める前に最終確認くらいしてほしかったが。
    • それよりなにより、一番のクソムーブは、青森でハウを載せてきちゃったことに気づいた後、同僚に「その犬はどうした?」って訊かれて「さっきそこらへんから歩いて迷い込んできた、知らない犬だよ。ほら!さっさと行け!」と追い払ったのはどう見ても擁護できない。連れてきちゃったのは仕方ないとして、それに対する罪悪感とか微塵もないのか?もしコイツが飼い犬だったら……とか一切考えないのか?もしもっと親身に「どこから載せてしまったのか」「どうすれば良いのか」と考え行動できていれば、展開天と地ほど違うと思うよ?(2回目)。
    • ハウが荷台から出て来たときに狼狽えてずっこけるシーンは迫真の演技だと思った。役者さんがすげえうまい。
  • ハウに餌やってた自動車整備士のおっちゃん達
    • ハウに名前をつけて餌をやって可愛がる自動車整備士のおっちゃん家族。心温まるやり取りだなあ、と思ったらおもむろに立ち去ろうとするハウに対して「元気でな!」。
      • いや呼び止めないんかい!何でこの人ら、私たちはハウの良き理解者です、みたいなツラしてて次の瞬間には平気でハウの野良犬放浪を許容すんの!?情が移った動物に対して無責任すぎない!?飼うつもりないならちゃんと飼い手を探すべきでは?周りの人にとっても、首輪なしでこの大きさの犬が放浪してるなんて人によっては恐怖でしかないんだよ!保健所に連絡行けば即捕まるんだよ!そこらへんに野良犬がどこでもいた昭和じゃねえんだよ!ハウはハウで、何を基準に腰を落ち着けるか否か、何を基準に去っていくタイミングを測っていたのか、謎。
  • 福島から逃げてきた、新しい学校に馴染めない女子高生
    • 全体的に挙動が謎。言葉によるやり取りが少なく、察せる情報が少ない。唐突なダンスシーン。いじめっ子に対して「これ、私の死んだばあちゃんの写真」って渡してなんの解決になったんだろう?
  • シャッター街で、亡き夫の跡を継いで細々と傘屋を営む高齢女性
    • ハウを可愛がってくれる優しい女性。自動車整備士のおっちゃん達もそうだが、どうしてここまで面倒を見て、すぐさよならなんだろう? 飼おうとする選択肢はないのだろうか。
    • せめて店内では首輪と紐で繋いでおいてくれないと、客が困る。あと大型犬を首輪とかなしでリリースしないで。
      • ハウに対して亡き夫の幻影を重ねるシーンは、いや背格好違うんだからそうはならんやろ、となってしまった。良いシーンなんだけどさ。
  • ハウの元飼い主の女性
    • DV夫に苦しみ修道院に逃げ込んできた可哀想な人。
    • ハウが声を失う直接の原因となった人だが、あまりにも夫がクソすぎるので、正直この人には同情しか湧かない。
      • でも、周りの静止を聞かずに夫の前に姿を見せて余計に場を混乱させるムーブは許さないよ。気持ちはわかるけど、周りの人の努力を無に帰すな。
      • そして、やはりというべきか、これからはラッキー(ハウ)と一緒に暮らそう!ってならないのが驚愕。え!?そこからハウを放り出すの!?この理屈、本当にマジで理解できない。これまでハウに出会って来た人たちは、ここまで色々突っ込んできたけど、「ハウが放浪の旅に戻るのを許容してきたのは、首輪のないハウを見て、野良犬だと思った=飼い主がいると思わなかった、だから迷い犬として飼い主を探さなかった」という理屈を無理やりつければ、まあ理解できなくはない(納得できないし、ハウと仲良くした割に白状だな、と思ったけど)。だけどこの人は、自らの手で保護団体に連れていったんだから、他の貰い手から脱走してきたんだ、ってわかるよね??何で何も行動起こさないの?最初に連れて行った保護団体に連絡しないの?この人がちゃんと動いてれば展開天と地ほど(略)。せめて何らかの理由により飼えない(あるいは飼う資格がない)と判断したとしても、新しい飼い主を探さずに野良犬としてリリースはあり得ないよね?何考えてるのこの人……。
  • ハウの元飼い主の女性の夫
    • わかりやすい悪役。この人が暴れるシーンはあまりにも残虐で生々しくて、目を背けてしまった。ちょっと浮き気味。
    • クソオブクソなのは満場一致でその通りだと思うが、「うわあ、こいつクズだ」と思わせる俳優さんの演技がめちゃくちゃ堂に入っていて、変に感心してしまう。悪役としてリアリティさはすごい。
    • 納得いかないのは最後のシーン。車が横転し、燃え始める車からハウが助け出して、何となく男が改心するような雰囲気を漂わせているけど、ぶっちゃけ何も解決してないと思う。これほど身勝手な男が、犬に命を救われた程度で心を入れ替えて夫婦仲良く暮らせるようには、どうしても思えない。あんなに執拗に横暴さが際立つシーンが長い尺で続いたのに、簡単に改心してしまっては明らかに釣り合ってない。
  • ハウの新しい飼い主の小学生と母親
    • 大型犬を子供一人で散歩させんなや!めちゃくちゃ力強い上に、ハウはずんずん突き進んでいくタイプの犬だから、子供の腕力で制御できるわけないやろが!
      • 事実、コントロールできなくてリード離しちゃってるし。
    • 柵も囲まれてない河原でボール投げ遊びすんなや!あぶねえだろ普通に考えて!そのせいでハウはあんな目にあったんだぞ!?何でこう、全体的に犬に対して悪い意味で奔放なんだろうな、もしかして原作の時代設定昭和か?
    • 縁もゆかりも無い行きずりの男に、複雑な家庭事情話し始める母親って怖いな。
  • ナレーション
    • 個人的には、ない方が良かった。
      • 特にハウの心情描写については、直接ナレーターに語らせてしまっては風情があまりになさすぎると感じる。あくまでハウの行動のみで表現する努力をしてほしかった。現実にペットの気持ちなんて知りようがないんだから。

 こんな感じ。
 すげえ長くなってしまった。

 纏めると、

・ハウがドチャクソに可愛い。
・動物ものにありがちな、「動物と人間の絆は尊い」というありがちな価値観に立脚した陳腐なストーリーに陥らず、かと言ってあまりにも突飛でついていけないような論理に帰着するでもなく、予想外かつ納得感ある着地が上手い
・全ての良さが、全編に渡って繰り返し挿入される登場人物たちの考慮不足ムーブや腹落ちできない挙動により歪められている

 というのが感想でした。